親が暮らした実家を相続したとき、家に残るのは家具や思い出の品だけではありません。エアコン、給湯器、システムキッチン。こうした住宅設備をどうするかで手が止まってしまう方は本当に多いです。

申し遅れました、住宅設備アドバイザーの和田 兼久です。ハウスメーカーで10年以上、住宅設計と設備提案に携わってきました。その経験から先にお伝えすると、住宅設備は「全部処分」が正解ではありません。

値段がつくものを見極めて、片付けと買取を同時に進める。これだけで費用も手間も大きく変わります。この記事では、その具体的な手順と判断基準を解説します。

Conclusion

この記事の結論

相続した実家の住宅設備は、年式・メーカー・状態次第で買取の対象になります。処分業者を呼ぶ前に査定を挟むだけで、支出だったものが収入に変わり、片付け費用の相殺にも使えます。

  • 相続放棄を検討中なら売却・廃棄はストップ。相続登記は取得を知った日から3年以内に申請する
  • 設備の扱いは実家の出口(売却・解体・賃貸)とセットで決める。解体予定なら壊す前の査定がカギ
  • 順番は「査定が先、処分は後」。買取は古物商許可、片付けは廃棄物処理の許可・委託関係を確認する

相続した実家、放置はNG。片付けを始める前に確認したいこと

まずは前提の整理から。片付けの前に確認しておかないと損をする、あるいは取り返しがつかなくなるポイントが3つあります。

空き家の約6割は「相続」がきっかけ。放置すると税金・管理リスクが増える

総務省の令和5年住宅・土地統計調査によると、全国の空き家は約900万戸、空き家率は13.8%と過去最高になりました。国土交通省の令和6年空き家所有者実態調査 結果のポイントでも、空き家の57.9%は相続をきっかけに取得されたものだと分かっています。実家を持て余しているのは、あなただけではないわけです。

ただ、放置は禁物です。管理の行き届かない空き家には、次のようなリスクがあります。

  • 「管理不全空家」や「特定空家」と判断されるおそれがある
  • 自治体の指導に従わず勧告を受けると、固定資産税等の住宅用地特例から外れる可能性がある
  • 雑草や老朽化をめぐって近隣トラブルに発展しやすい

相続放棄を検討中なら、売却・廃棄はいったんストップ

借金などの事情で相続放棄を少しでも考えているなら、遺品や設備の売却・廃棄など、財産の処分はいったん止めてください。相続を承認したとみなされ、放棄できなくなるおそれがあるためです。現状維持のための保存行為は別ですが、処分との境界は簡単ではありません。

判断に迷う場合は、手を動かす前に弁護士や司法書士に相談しましょう。

相続登記は2024年4月から義務化。3年以内の申請を忘れずに

東京法務局の案内「相続登記が義務化されました」のポイントは次の3つです。

  • 2024年4月1日から相続登記の申請が義務化された
  • 不動産の取得を知った日から3年以内に申請が必要
  • 正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になる

義務化より前に相続した不動産も対象です(施行日から3年の猶予あり)。片付けと並行して、登記の手続きも進めておきましょう。

実家の住宅設備は売れる?買取対象になる設備と値段がつく条件

「古い家の設備なんて売れないだろう」と思われがちですが、そんなことはありません。ハウスメーカー時代の実感として、住宅設備は家の中でも資産価値が残りやすい部位です。

買取対象になりやすい住宅設備の例

買取市場でよく取引されているのは、次のような設備です。

  • エアコン
  • 給湯器(ガス給湯器・エコキュート)
  • システムキッチン
  • 温水洗浄便座(ウォシュレットなど)
  • 食洗機・IHクッキングヒーター・ビルトインコンロ
  • 洗面台・水栓金具
  • 照明器具

特に狙い目なのが、親御さんが晩年にリフォームしていたケースです。「リフォームしたばかりのキッチンを壊すのはもったいない」という相談を私は何度も受けてきましたが、年式の新しい設備はまさに買取向き。未使用品や展示品クラスなら、さらに期待できます。

品目ごとの相場感や、査定額を左右する具体的な要素は、住宅設備を高く売るには?プロが教える買取価格アップの秘訣にまとめています。金額の見当をつけたい方はあわせてご覧ください。照明器具が売れるかどうかは照明器具の買取事情|シーリングライト・ダウンライトは売れるのか?で解説しています。

査定の分かれ目は「年式・メーカー・状態」

査定額を左右するのは、年式・メーカー・状態の3つです。目安をまとめます。

  • エアコンは製造から5年以内なら買取の可能性が十分。10年を超えると難しくなる
  • 給湯器も同じで、年式が新しいうちに動くのが鉄則
  • TOTO、LIXIL、Panasonic、リンナイ、ノーリツなど大手メーカーの製品は安定して評価される
  • 取扱説明書・保証書・リモコンなどの付属品が揃っていると査定は上がりやすい

査定前には型番と製造年を控えておきましょう。エアコンなら本体側面や下部のラベル、給湯器なら前面カバーに記載があります。どこを見ればいいか分からないときは、給湯器の製造年の確認方法。リモコンや本体ラベルのどこを見ればいい?が参考になります。給湯器を例にした記事ですが、ラベルの探し方は他の設備でも考え方は同じです。

金額は状態次第で数千円から数万円まで幅があるので、まず査定に出して確かめるのが早道です。エアコンを売る際の注意点はエアコン買取で損しないための注意点|悪質業者の見分け方も解説でも触れています。

エアコンは家電リサイクル法の対象。売れない場合の処分ルールに注意

環境省の家電リサイクル法の概要によると、家庭用のエアコン・テレビ・冷蔵庫(冷凍庫)・洗濯機(衣類乾燥機)の4品目は家電リサイクル法の対象です。エアコンに値がつかなかった場合は、メーカーごとに定められたリサイクル料金と収集運搬料金を払って処分します。家電リサイクル券センターの2026年4月版一覧では、エアコンのリサイクル料金は550円、990円、1,034円、2,000円などです。

なお、照明器具など多くの家庭用電気機器は小型家電リサイクル法の対象です。ただし、実際に回収する品目や出し方は自治体によって異なるため、所在地のルールを確認してください。

つまり同じエアコンでも、売れれば収入、売れなければ出費。この差が積み重なるので、処分の前に「売れるかどうか」を確かめる価値は十分あります。

実家の出口別に決める。住宅設備「残す・売る・処分する」の判断基準

見落とされがちですが、設備の扱いは「実家そのものをどうするか」とセットで決める必要があります。全体像を表にまとめました。

実家の出口 住宅設備の基本方針
売却する 残す設備と撤去する設備を仲介業者へ相談し、付帯設備表と売買契約で明確にする
解体する 壊す前に取り外して売る。査定は解体工事より先に
賃貸に出す・自分で住む 設備の寿命を確認し、使い続けるか交換するかを判断

家を売却するなら:設備の扱いを契約前に決める

中古住宅の売買では、給湯器・キッチン・トイレなどの設備について、残すものと撤去するものを売買契約で決めます。契約時には付帯設備表という書類で、設備の有無や状態を買主に示します。

設備を勝手に外すと家の評価を下げたり、契約トラブルの火種になったりします。売却予定なら、売り出す前に仲介業者へ相談してください。後付けのエアコンや照明器具も、引き渡す設備として合意した後は無断で外せません。

解体するなら:壊す前に「外して売る」チャンスがある

解体してしまえば、どんなに新しい設備も廃棄物です。逆に言えば、解体前なら給湯器やキッチン、温水洗浄便座などを取り外して買取に回せる可能性が残っています。

段取りは、解体業者より先に買取査定を入れる。これだけです。なお、ガス機器や水道まわりの取り外しには資格を持った業者の工事が必要なので、自分で外そうとせず査定のときに相談してください。

賃貸に出す・自分で住むなら:設備の寿命から逆算する

設備には寿命があります。給湯器はおおよそ10年前後、エアコンは10〜15年が交換の目安です。

先ほどの国土交通省の調査では、相続空き家の7割超が1980年以前に建てられたものでした。築年数が古い実家ほど設備が寿命を迎えている可能性は高いので、使い続けるか交換するかを寿命から判断し、交換するなら取り外した設備の買取可能性もあわせて確認しましょう。

片付けと買取を同時に進める手順5ステップ

ここからが本題です。片付けと買取を別々に進めると、手間が二重になるうえ「売れたはずのものを捨てる」失敗が起きます。次の5ステップの順番だけは守ってください。

ステップ1〜2:貴重品・書類の確保と「売る・残す・処分」の仕分け

最初にやるのは、重要書類と貴重品の確保です。処分してからでは取り返しがつきません。1回目の帰省で必ず済ませておきましょう。

  • 権利証・登記関係の書類
  • 通帳・キャッシュカード
  • 保険証券・年金関係の書類
  • 印鑑・貴金属

その後、家財を「売れそうなもの」「残すもの」「処分するもの」の3つに仕分けます。住宅設備は、前の章でお伝えした出口別の判断基準に沿って仕分けてください。

ステップ3〜4:処分より先に買取査定。設備は写真査定も活用

順番を間違えないでください。先に処分業者を入れると、値のつくものまで費用を払って捨てることになります。買取査定が先、処分は後です。

住宅設備の場合、型番と製造年のラベルを写真に撮っておけば、写真査定や出張査定が使えます。遠方に住んでいて何度も実家に通えない方こそ、この方法が向いています。

ステップ5:買取額で片付け費用を相殺する

家一軒の片付けを業者に頼むと、間取りや物量によって数万円から数十万円かかるのが実情です。ここに買取額を充当すれば、総費用を圧縮できます。

買取と片付けの両方に対応する業者なら、査定・搬出・処分が1回で終わるため、手間の面でもメリットは大きいです。「片付け費用が高すぎる」と感じている方ほど、買取との同時進行を検討してみてください。

失敗しない業者選び。買取と片付けを安心して任せるチェックポイント

最後に業者選びです。ここで手を抜くと、安く買いたたかれたり高額請求されたりしかねません。チェックポイントは3つに絞れます。

買取業者は「古物商許可」の有無をまず確認

中古品の買取を事業として行うには、古物営業法に基づく公安委員会の許可(古物商許可)が必要です。確認したいのは次の3点です。

  • 公式サイトや店頭に古物商許可の番号が表示されているか
  • 取り扱い品目に住宅設備が明記されているか
  • 給湯器やキッチンなど住宅設備の買取実績があるか

家具や家電の買取店がすべて住宅設備を扱えるわけではないので、実績のある業者を選ぶのが確実です。無許可業者の手口や見分け方は、その業者、大丈夫?無許可の住宅設備買取業者の見分け方とトラブル回避策で詳しく解説しています。依頼先を絞り込む前に目を通しておくと安心です。

遺品整理は資格と見積もりの明確さで選ぶ

遺品整理を任せる場合は、次の点をチェックしてください。

  • 家庭ごみの処分まで頼む場合、業者自身が市区町村の一般廃棄物収集運搬業許可を持つか、市区町村の委託業者・許可業者と適法に連携しているか
  • 一般財団法人遺品整理士認定協会が認定する「遺品整理士」が在籍しているか
  • 複数社から相見積もりを取ったか
  • 作業範囲(仕分け・搬出・清掃・買取)と追加料金の条件が書面で示されているか

口頭だけの見積もりで契約するのは避けましょう。古物商許可や遺品整理士の資格だけでは、家庭から出た廃棄物を収集・運搬できません。

訪問買取のトラブルには「8日間のクーリング・オフ」

自宅に業者を呼ぶ「訪問購入」では、対象となる物品や取引であれば、法定書面を受け取った日から8日以内にクーリング・オフできます。

ただし、すべての住宅設備に使える制度ではありません。消費者庁の訪問購入に関する案内では、エアコン、電気給湯機、食器洗い機、コンロ、照明など、携行が容易でない家庭用電気機械器具は規制の対象外とされています。契約書面を確認し、対象か判断できない場合は消費者ホットライン188へ相談してください。

よくある質問(FAQ)

Q: 相続した実家の片付けは誰がやる?費用は誰が負担しますか?

A: 相続を承認して実家を取得する人が中心となって片付けを進めます。相続人が複数いる場合は、作業担当と費用の出し方を事前に協議してください。費用を相続財産から支出できる場合もあるため、遺産分割前は独断で支払わないことが大切です。

Q: 遺品整理や片付けはいつから始めればいいですか?四十九日前でも大丈夫?

A: 片付けを始める時期に法律上の決まりはなく、四十九日前でも差し支えありません。ただし、相続税の申告が必要な人には、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内という申告・納税期限が別にあります。財産の確認や評価に必要な資料は、片付ける前に確保してください。

Q: 10年前のエアコンや給湯器でも売れますか?

A: 正直なところ、10年を超えると買取は難しくなります。エアコンは製造5年以内が目安です。ただしメーカーや状態、需要によっては値がつくこともあるので、処分費用を払う前に一度査定に出してみる価値はあります。

Q: 買取してもらえなかった家電や設備はどう処分すればいいですか?

A: エアコン・テレビ・冷蔵庫・洗濯機の4品目は、家電リサイクル法に沿ってリサイクル料金を払って処分します。照明器具などの小型家電は、自治体ごとに回収品目や出し方が異なります。それ以外の廃棄物も自治体のルールに従うか、市区町村の委託業者または一般廃棄物収集運搬業の許可業者へ依頼してください。片付け業者へ頼む場合は、許可業者とどう連携して処分するのかを確認しましょう。

Q: 遠方に住んでいて実家の片付けに何度も行けません。どう進めればいいですか?

A: 型番・製造年のラベル写真を使った写真査定や出張査定を活用すれば、訪問回数を減らせます。片付けと買取の両方に対応する業者に一括で任せるのも手です。1回目の訪問で、貴重品と重要書類の確保だけは必ず済ませておいてください。

まとめ

相続した実家の住宅設備は、「全部処分」と決めつけないことが何より大切です。ポイントを振り返ります。

  • 相続放棄の可能性があるなら売却・廃棄はストップ、相続登記は3年以内に
  • 住宅設備は年式・メーカー・状態次第で売れる
  • 実家の出口(売却・解体・賃貸)で設備の扱いを決める
  • 処分より先に査定。買取額で片付け費用を相殺する
  • 買取は古物商許可、処分は一般廃棄物の許可・委託関係、作業は資格と書面見積もりを確認する

設備の価値は、時間とともに確実に下がっていきます。私はこれまで、査定を後回しにしたばかりに、値のつくはずだった給湯器を処分費用を払って捨てる現場を何度も見てきました。

迷ったら、まず査定だけでも早めに。片付けと買取の両方に対応した専門業者に相談すれば、実家の片付けは一度の依頼でぐっと前に進みます。